今回は、水戸で初の女性ソムリエの資格を取得し、現在はシニア・ワイン・アドバイザーとして活躍する植田真未さんを訪ねました。
ソムリエは、レストランで、お客様の予算・料理に合わせて、またお客様の好みや体調にもよって最適なワインを選ぶ仕事。シニア・ワイン・アドバイザーとは、酒販店で同じ仕事をするソムリエよりもワンランク上の資格です。植田さんはなぜワインの仕事に目覚めたのでしょうか。
初めての海外旅行が...
「大学1年の時、初めての海外旅行が、たまたまカリフォルニアでのワイナリー巡りをするツアーだったんです。そこで楽しそうにワインを作っているおじさんの話が面白くて興味を持ちました。このツアーの主催者から、翌年のフランスツアーには、すごい人が同行するから参加したら、って言われて、そこで出会ったのが浅井昭吾さんでした。」
浅井昭吾(ペンネーム:麻井宇介)さんは、メルシャン勝沼ワイナリー工場長を務め、また山梨県ワイン酒造組合長としても活躍する傍ら、講演や新聞・雑誌への寄稿、著書も多数出版したワイン研究家だ。ワイン醸造技術の第一人者であり、現在の日本のワイン作りに大きな実績を残した一人である。
「先生から、ワインは人と自然が協力しあってできるもの、ワインは文化であることを教わりました。そして、お酒を一面からだけじゃなく、常に客観的・多面的に見ることが大切だということを知ったんです。」
「主観的・一面的では自分中心の偏った見方になってしまう。常にいろんな方向から見なければならないということを教わりました。たくさんのことを教わって、本当の娘のようにかわいがっていただいて、それでワインの仕事をしようと思ったんです。」
“何となく”を取り除きたい

大学卒業後、東京のレストランで働きながらソムリエの資格を取得。8年前、酒屋でもある実家の水戸に戻り、現在は、お店の仕事にイベントやツアーの企画、結婚式場やレストランなどで行なうワインのセミナーなどを中心に、忙しい毎日を送っている。
最近は東京からの依頼も多いというが、東京にもワイン業界の人はたくさんいるはず。なぜ、はるばる茨城から呼び出されるのでしょう?
「ワインって、ちょっと気取ったイメージがありますよね。私が多分そういう雰囲気じゃないからかも? 普通のセミナーだと、品種とかのマジメな勉強会という感じで...。じゃあ真剣にやって最後に何を覚えましたか、って聞くと“良く分からなかった”っていう感想が意外と多いんです。私はそういうセミナーにはしたくないので、まずはワインを好きになってもらう、楽しんでもらうことをベースに話をするようにしています。」
「何でもそうだけど、楽しかったって思わないと好きにならないですから。それに、やってる私も楽しくないと、みんなもニコニコできないでしょ。」
楽しさを一番に、と考えられた講習が人々の心をつかむが、日本酒や焼酎などに比べると、カタカナ文字のワインはまだまだ敬遠されがち。ワインに対する見えない壁が立ちはだかるが...。
「日本人って、外国の文化を取り入れるのがすごく上手だと思うんです。どこの家庭でも、ナイフやフォークが当たり前のようにあるし、ワイングラスだってあるところ多いし。だったら、ワインの飲み方や開け方も知ってていいですよね。せっかく飲むんだから。でもやっぱり遠ざけちゃう。なぜか分からないけど、ワインだけには壁を作って何となく避けちゃう。その“何となく”を取り除きたいですね。」
ちゃぶ台でワイン

水戸に帰って8年。これまでに出会ってワインの話を聞いた人は1万人以上。その数に満足することなく、今も地道に活動を行っている。そこには、一人ずつでもいいからワインのことを広めたい、という気持ちが込められている。
「たった1回の講習でも、ある時思い出してくれたら嬉しい。誰だか分からないけど、女の人がワインの話をしてくれたよね、って。そんな記憶でいいんです。いつか、誰からかワインをいただいたときに、あの時話を聞いたから飲んでみようかな、って思ってもらえたら嬉しいですね。」
セミナーには、企業の社長さんから農協のおじいちゃん、20代の若い層まで様々な人が参加する。ワインが全ての人たちに受け入れられるようになるには、それぞれに柔軟なスタイルで楽しむことが大切。植田さんが描く将来のワイン像は?
「実は私の将来の目標は、“ちゃぶ台でワイン”なんですよ。ちゃぶ台であぐらかいて、テレビ見ながら気軽にワインを飲みたいなって。みんなもそうなってもらいたいし。えらいソムリエさんが聞いたら、なに言ってんだって言われちゃうでしょうね(笑)。でも、これからの高齢化の日本ではそういのもありかなっと思ってます。」
おいしいかもしれないのに。人生もったいないですよ

ワイン好きが高じて、そこからシニア・ワイン・アドバイザーという、ソムリエよりもワンランク上の資格をとり、仕事として活躍できるようになるには、見えないところでの勉強や努力があったことも忘れてはならない。どうしたら好きなことを仕事にできるのか?
「あらゆることに興味をもって、いつも本気で、何事にも積極的に接すれば、自分が好きなものって絶対見つかると思います。」
「好きなことって、大変だとか給料が安いとか関係ないんです。普段の生活の中でも、外に出ていろんな人に会って、いろんなことをやってみるのが、やりたいことを発見する方法じゃないでしょうか。」
「とにかく何でも興味を持つことが大切。ワインもそう。“分からないからいいや”ではそれで終わっちゃう。食べたことがないからって食べないのももったいない、おいしいかもしれないのに。人生もったいないですよ!」
周りから明るい人と言われ、自分でもそうだと太鼓判を押す植田さんは、先日携帯電話を落とした際、落ち込んだのは5分間だけだったそう。
「だって、新しいものを買えると思ったら嬉しくなったから」と。
大変だと思うことも、裏を返せばそこに楽しさや面白さがある。常にプラスの方向で物事を考えられる植田さんは、これからも変わることなくシニア・ワイン・アドバイザーしての道を元気に歩み続けることでしょう。