オンとオフがあるようでない、みたいな感じ

2006/03/02 VOL.39
JDRスミヤ店長 根本 鉄平さん

 水戸市泉町のメイン通り。ショーウィンドウのセンスあるディスプレイに思わず目が止まります。このショップはJDR。アパレルブランド「JUN」の商品をメインに、水戸市で20年以上に渡りファッショントレンドを発信、地元に密着したアパレルショップとして多くの方に親しまれています。店内は、1階がメンズファッション、2階がレディース、3階に喫茶スペースがあり、ゆとりのある店内でゆっくりとショッピングを楽しめる空間となっています。今回はJDRの店長 根本鉄平さんを訪ねました。

 フリーターの覚悟も...

 ご両親もアパレル業を経営するという環境で育ったのだから、当然、小さい頃からファッションに興味があったかと思うが...。
 「それが全く興味がなかったんです。小学生から中学生くらいは、興味が別の方向だったし。興味を持ったのは高校生くらいから。僕の場合、洋服を買うことより、持ってる服を自由自在にコーディネートするほうが好きだったかな。あれこれ着替えては鏡に向かって、妹にファッションチェックとかしてもらったりしてました。」

 東京の専門学校に通い、就職活動もそれほどせずフリーターの覚悟もしていた。東京に残りたい、ある程度の収入がある会社、と思って選んだのが紳士服の大手「アオキインターナショナル」。先生からは受からないだろうと言われ、本人も自覚していた。
 「それが倍率35倍だったのに受かっちゃったんです。宝くじが当たったかと思いました。多分、面接で洋服が好きということを訴えても意味がないなって思って、販売ということに絞って『アオキに入ったら顧客を1000人作ります』って言ったことが良かったのかな。本当にそう思ったから言っただけなんですけどね。」

 アオキで学んだ『とっかかり』

 アオキは他社と比べ商品の質が良く、スーツのつくりの基本を学べた。社員それぞれの個性ある販売スタイルは見るだけで勉強になった。得意だと思っていたはずの敬語が最初はうまく使えなかったが、周りを見ながら自然と話せるようになった。
 「普通のアパレルに入るより、ずっと商売の根本的なことを知ることができました。洋服の中身、接客のこと。年配のお客様に対する接客も身につけることができて、最初の『とっかかり』っていう部分を学べたと思います。」

 アオキを退職後、現在の「株式会社JDRスミヤ」に入社。宇都宮の百貨店に出店という時期も重なり、諸事情でやむなく店長を任される。22歳にして売上げや顧客作り、スタッフの管理など全てを背負うことになった。
 「正直、困りました。アオキで学んだとっかかりはあるけど、中身がなかったですから。でも泣きごと言ってられないんで、自分ができることをやれることを少しずつみんなでやってきたってかんじです。最初はとんでもない売り場を作りましたよ。例えば、スーツが売上げの大半を占めるんだったら、極端な話、売り場にはスーツだけ置けばいいんじゃないかって考えたりして、いろいろ失敗がありましたね。」

 どうしても靴を売りたい時、数件隣のリーガルショップに出向き靴の基本的なことを教わり、女性スタッフとの接し方で困ったときは、近くのショップの女性店長さんにアドバイスをもらうなど、売上げや職場改善、他店との差別化を図るためにライバル店にも積極的に足を運んだ。
 「普通、ライバルの人間が来たら嫌がりますよね。でも皆さん親切に教えてくれて、すごく助かりました。」

 現在の水戸の店舗に戻ってから、宇都宮の時のインショップと水戸の路面店での仕事の違いに、最初は戸惑いがあったと当時を振り返る。経験を活かすつもりが、どうしても商業的な発想になってしまっていた。
 「水戸のJDRは全国の中でも、比較的年齢層が高く、96%がリピーターのお客様です。そのお客様に、商業的なニュアンスで物事を訴えても、お客様には何のメリットもないんですよ。じゃあ何かっていえば、スローライフじゃないですけど、ゆっくりとした空間でお客様に楽しんで喜んでもらえたらいいなって。3階にある喫茶スペースだって、本来インショップだと必要のないスペースですが、せっかくならそれを活かすことが路面店のやり方なのかなって思うようになりました。」

 次につながる嬉しさ

 釣りやサーフィンや車など、いろんな趣味やスポーツがあってファッションがあると考える。
 「洋服だけで自分が食べていくには違いないけど、その他のいろんな環境があることでファッションが支えられているんです。例えば、音楽が変わればファッションも変わっていきますからね。」

 嬉しい瞬間は、自分が勧めたものを気に入ってもらえて、また次に来店いただける。次につながってくれる時だという。
 「県北で美容師をしているお客様がいるのですが、美容室に来るお客様の中に美容師さんのファッションが気になった方がいて、どこで買っているのか聞かれたそうなんです。それでこのお店と自分を紹介してくれて、それ以来、美容室の帰りにお店に寄っていただけるようになって、自分を信頼して紹介していただけたっていうことがまた嬉しい時ですよね。」

 将来は、服を作ることや他のこともやってみたい気がするとか。
 「でもやっぱり長くお客様に喜んでもらえて、その結果自分が年をとっても、『かっこいい』と言われている生活が自分にとってはいいかな。」

 趣味が仕事で、仕事が趣味

 「よく仕事とプライベートが別、っていう人いますが、僕の場合、仕事の延長線上に自分がいるんですよね。休みの日にデパートへ行っても、面白いディスプレイを見かけると、次の日お店でやってみることもあって、結局仕事につながっちゃてる。オンとオフがあるようでない、みたいな感じの人のほうが意外と望まれるんじゃないかな。だからって一生懸命やるってことじゃないですよ。仕事の大変な部分すらも楽しんじゃおうと。趣味が仕事で、仕事が趣味。例えば他の仕事、料理人とか美容室で働く人と比べると、アパレルは人と話せて、つながりができて、それで給料が出て、洋服を買うことができる、なんて良い仕事じゃないかって思います。」

 仕事も遊びの感覚でこなしてしまう。逆に、仕事を遊んでいるように見せるのも、販売のプロがなせる技ともいえます。だからこそ訪れる人は、気使いせず、気持ち良くショッピングを楽しむことができるのかもしれません。JDRが地域に根付き、多くのお客様に親しまれている理由がここにあるようです。
24時間仕事をしているという根本さんは、寝言で「すみません!」とか「ありがとうございます!」と言うことも。これからJDRを拠点に大きく水戸を盛り上げていってくれるでしょう。