陶芸の町、笠間。古くから笠間焼の産地として知られるこの町は、訪れる人を巨大な壷や花瓶が迎えてくれます。また、町中には数々の個性的な陶器店やギャラリーが建ち並び、様々な味わいの陶器たちが人々の心を楽しませます。中でも、かわいらしくもどこかどっしりと落ち着いた雰囲気のある招き猫と、色鮮やかでメルヘンな世界が細やかに描かれた食器たち。陶芸家、外山亜基雄さんの作品です。全国にファンを持ち、笠間焼の第一線で活躍する人気作家、外山さんの素顔に迫ります。
9年越しの想い 〜趣味から仕事へ〜

教育学系の大学で美術を専攻していた外山さんは、そこで出会った陶芸と彫刻の教授に強い影響を受け、“物を創ること”に強い興味を持ち、趣味で陶芸を始めた。
「美術教師になろうと教育実習に行ったけど、その世界の特殊さに驚いた。」 学生の90%が教師になって卒業していく中、教師の世界が肌に合わないと感じていた彼は研究生として大学に残り、陶芸を続ける。
研修生期間も終わり、知人の紹介で東京の福祉施設に勤めるも、借家の敷地にプレハブを建てて小さな窯を持った。仕事から帰るとすぐに粘土に向かう日々。
「いつか、趣味を仕事にしたいと思っていたんです。」 その生活を9年続けたのち、意を決して陶芸一本でやっていく事を決意。知り合いのいる茨城県御前山村へ移り住む。
新たな地、茨城で、陶芸に専念し始めた外山さんだが、その道はやはり険しかった。前衛陶芸に強い興味を持ち、創りつづけてきたが、当時はまだ受け入れてくれる店やギャラリーが少なかった。
「創りたい物と、売れる物は違うんだ、と思い知りました。」 それからは作風を変え、「売れる」ものを作りはじめると、たちまち人気がでて、店に卸してもすぐに売り切れる状態となる。しかし、本人としては複雑な心境だった。現在も「売る」ことを目的としない展覧会では、「自分が本当に創りたい物」、前衛陶芸で本当の自分を表現することを続けている。
「趣味を仕事にできたけど、本当に好きなことを仕事にすることはできなかった。本当は、そういう“自分が本当に望んでいること”を仕事にするのがいいんだと思います。」
笠間に移り住んだのは、それから2年後。御前山の借家はボロボロで、子供も成長していくことを考えると、長くは住めなかった。現在はまるで物語の中のような、緑あふれる自然に囲まれ、昔ながらの田舎の風景を一望できる丘の上に、妻と娘、そして妻の両親と共に暮らしている。
独自の世界・独自の作風。その秘密は...

陶芸を志す人は、たいてい窯業指導所で専門的に学ぶか、窯元に弟子入りするかなのだそうだが、外山さんは全くの独学。
「先生といえば、本屋さんで買った適当な本か、陶芸教室ですよ」 笑って話すが、その努力は計り知れないものであったはず。だが、誰にも習わなかったおかげで、誰かに強い影響を受けることもなく、独自の世界を創り上げることが出来たのかもしれない。
作品は細かい絵柄で、かなり手をかけていることがわかる。色とりどりのかわいらしい食器や独特の表情をした招き猫が並び、お客は自然と楽しい気分に。
「日本人は、綺麗・細かい・わかりやすい、という要素が好きらしくて、それにかわいいも足しちゃえ、というのがコンセプトです。あと、招き猫などは、当時この辺りで作っている人がいなかったので、人のやってないことをやりたかった。」 大人気作家とは言え、作れば売れるというのは難しい。作品自体の質はもちろん、どこに何をどれだけ卸せばいいか、なども計算しないと売れ残りがでてしまう。陶芸家でもピンからキリまでで、億を稼ぐ人もいれば、年収100万円に満たない人もいる。笠間では年収200万円くらいの人が多いという。
「夢を壊すようですが、それが現実ですね。」
実は、陶芸に対してかなり突き放した見方をしていると言う。
「陶器を見て、いいなあ、と思っても絵や彫刻と違って涙をながしたりしませんよね。陶芸は、やはり工芸なんです。生活の中にあるもの、生活の中で楽しめる物を創っています。」 しかしながら彼のファンは「使うのがもったいない」と言って使わずに飾っていることが多い。そこには確かな“見て感じ、楽しむ”前衛陶芸の流れと、“使って感じ、楽しむ”生活工芸としての陶器の融合を感じた。
プロは平均以上を保ってこそプロ

趣味を仕事にする。誰もがあこがれることをやってのけ、成功を収めた外山さん。実際に仕事としてやって、趣味でやっていた時とどんな所が変化したのだろう。
「プロとアマチュアの違いは、プロは平均点を落とせないということかな。アマチュアは時に30点、時に100点でも許されるけど、プロは平均して70点以上を保ってなければならない。それが大変なんです。」
これはどんな世界でも通じることで、プロとして仕事をするには、技術や知識はもちろんのこと、それなりの覚悟と度胸がいるということだろう。逆境に立たされた時には...
「最初は逃げ出したくなりますけど、僕はあまり落ち込まないんです。むしろ、逆に大丈夫、大丈夫! と妙に前向きになっちゃう。普段からそのくらい前向きなほうがいいんでしょうけどね。」 そう笑って言えるのは、そういう場を何度も乗り越えてきた経験故のこと、そうして生まれた作品が、人々の心を惹きつけてやまないのだろう。
最後に、陶芸家を目指す人に一言メッセージを
「やはり僕みたいな遠回りをすると時間がもったいないので、ちゃんとした所で習ったほうがいいと思います。そこで知識と技術をつけて、自分の世界を求めて遠回りするのはかまわない。
最初から遠回りすると、後々になって自分に合わないことがわかっても抜け出せなくなる、それこそ本当にやりたいことが出来なくなって危険です。
何かを目指している人ならみんなそうですが、ぶつかるなら真正面からぶつかりましょう。そして、ぶつかったらジョビジョバを見る! これでいかがでしょうか?(笑)」