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日本酒のファンを増やしていきたい

2002/07/23 VOL.12
酒舗 おそのえ商店 店主 小薗江寿さん



小薗江 寿
Hisashi Osonoe

茨城県東茨城郡常北町出身。
昭和45年4月30日生まれ。O型。
奥様、お子さん2人の4人暮らし。
趣味はバイク・カヌー・釣り・スキー。
性格は『ガンコまたはこだわり派』とのこと。

●学歴
水戸短大付属高等学校卒〜上武大学卒

●職歴
(株)光和印刷〜小薗江商事(日立市・酒米小売店)〜おそのえ商店オープン

酒舗 おそのえ商店

●平成14年5月25日開店

●自分自身が責任のもてる、納得のゆく「和酒」をお届けしたいという想いから、酒舗おそのえ酒店を開店致しました。
自ら蔵元へ出向き、蔵人たちの仕事ひとつひとつをつぶさに確認し、是非、味わっていただきたいと思う「和酒」のみを取り扱わさせて頂きます。

●所在地
東茨城郡大洗町和銅18-7-1
TEL:029-264-5788
E-mail:shuho-osonoe@k6.dion.ne.jp

 

 

 

 

 

 

 



ただ売っているだけでは生き残れない

―"和"のテイストで落着いた雰囲気のお店ですね。オープンのきっかけを教えてください。

今年の4月まで、叔父の経営するお酒のディスカウントストアで働いていたのですが、あと1年足らずでお酒の販売が自由化になるということもあり、この先競争化が激しくなるという不安が常々ありました。
ただお酒を売っているだけでは、生き残っていけない。お酒は好きだけれども、自分にとってこの仕事が本当にやりたい形なのかと悩み、このままではいけないと考えるようになりました。
それで、まずはお店のメイン商品である、日本酒をもう一回見直してみよう、と勉強を始めて、何軒かの日本酒の蔵元の所にも足を運ぶようになりました。
そんな中、岐阜の蔵元の所で、一緒に酒作りを体験させてもらったことがあったんですが、朝5時から麹室に入って、手入れをしたりしてるうちに、人の作る日本酒の素晴らしさに感動してしまったんです。ここでの経験が、お店を始める大きなきっかけになって、思い切って独立しました。

―世界中のお酒が手に入る時代に、日本酒にこだわったのはなぜでしょうか?

日本酒には、昔ながらの文化が消えつつある時代にもかかわらず、技・蔵人の熱意・伝統といったものが根強く残っているんです。日本酒をつきつめると、農家さんが作った米から始まり、蔵元では米と水と気候、常に人が自然と戦って、苦労して作られているんです。
蔵によっても、作り方や管理方法、味わいも違うし、その土地の気候、料理に合った日本酒が作られています。世界の中でも、日本酒や焼酎ほど手間のかかるお酒はないんですよ。
そうした日本酒の奥深さを知れば知るほど楽しくなって、心底惚れ込んでしまったんです。

―それだけ惚れた日本酒なら、作り手としてやってみたい、という思いもあったのでは?

そうですね。岐阜で体験した酒作りのおもしろさが忘れられなくて、お店ではなく蔵に弟子入りしてしまおうかと思ったくらいです。でも自分は、人と会ったり、初対面の人と話すのが違和感なく楽しいし、何より接客が好きですから、やはりこちらの方が向いてるだろうと、酒舗を始めたわけです。


蔵元の娘を預かっているような気持ちです

―こちらでは卸問屋を通さず、小薗江さん自身が、直接蔵元から日本酒の仕入れをされているとか。

実際に蔵元の所に行って、直接話して、見て、納得したお酒だけしか置いていないんです。
そうでないとお酒に対する気持ちも入らないし、自信を持って売ろうという気合が入らないんですよ。ちょっと違うな、と思ったお酒はやっぱり売る気になれません。
もちろん、蔵元も私を気に入ってくれないと、大事なお酒を分けてくれないので、2年くらいかけてやっと取引できるようになったお酒もあります。そのときは嬉しかったですよ。

―簡単には、仕入れさせてくれないものなんですね。

やはり、蔵元と私の、お酒に対する思いが同じでないと、取引はできないです。蔵元も丹精込めて作ったお酒がどのような環境で売られているのか、保存状態等を見るために、よくお店に来られます。自分の娘を嫁に出すような気持ちと一緒で、嫁ぎ先が良い家なのか気になるんです。

―取引には、お互いの信頼関係を築くことが第一歩なんですね。

そうですね、ちょっとした親戚付き合いみたいな感覚でしょうか。なにしろ私は、蔵元の娘のような酒を預かっている身ですからね(笑)
だから全国に親戚がいっぱいいるみたいで、そういうのがまた楽しいし、日本酒に関することや、それ以外にも教わることがたくさんあって勉強になります。いろいろと親切にしてくれたり、心配してくれたりと、蔵本さんにフォローしてもらうことが多いです。



この店は人と人との線をつなぐ拠点

―お店がオープンして2ヶ月足らずですが、大変だと感じることはありますか?

一般的に日本酒というと、有名なブランドのイメージがどうしても強いですよね。ここに置いてあるのは、やはりちょっと見慣れないお酒なので、初めて来店されたお客様は、戸惑いを感じると思うんです。でも、ラベルは見たことがなくても、おいしい日本酒ってたくさんあるんですよ。それを分かってもらう為に、丁寧に丁寧に説明していくことは結構大変です。
それでも「あの日本酒おいしかったよ!」と言ってもらえたり「今日のつまみにはどんな日本酒が合うかな?」という相談に、アドバイスを差し上げて、買ってもらえた時はやっぱり嬉しいです。
また、そのお酒の評判を、造った蔵人に伝えることによって、話に花が咲いたりしてね。

―色々な思い入れがあるお酒ばかりで、小園江さんも、説明するのに力が入るでしょうね。

それはもちろんですよ。自分が蔵元で触れてきて感じてきた、日本酒を作った人の顔や風景が思い浮かぶような、見える説明ができるように努力して、一本一本丁寧に売るようにしています。
商品をたくさん売ることが目的なのではなく、日本酒とお店のファンを増やしていきたいんです。

―作り手の気持ちと、お客さんの話を、双方に伝える仕事でもありますね。

このお店は、蔵元からお客さんまで、人と人との線をつなぐ拠点なんです。私が直接、行って聞いてきた蔵人の思い、その日本酒のおいしさを、お客さんに減らすことなく伝えるということは、とても重要な役目だと思っています。100%伝えるっていうのは一番難しいんですけどね。だから、とても適当になんか売れないんです。

蔵人とお客さんが出会える「利き酒の会」

―ビールやワインに比べたら日本酒を飲む人は、まだ少ないように思われますが・・・。

日本酒も、少しずつですが、静かなブームにはなってきているんですよ。だから、日本酒を飲まない人が、うちのような店を入り口にして、日本酒のおいしさを知るきっかけになってくれるといいですね。若い人や女の人にも飲んでほしいし、もっと広まってほしい。飲んで日本酒のおいしさにビックリしてほしい。そんなビックリした顔を見るのが楽しいし、一番嬉しい瞬間なんですよ。

―おそのえ商店では、店内で「利き酒の会」という企画をされているようですが、具体的にはどのようなものなのでしょうか?

日本酒を囲みながら、蔵人とお客さんが直接、話ができる場を作っています。日本酒を語るのに私の説明で足りなかった部分を、フォローしてもらう意味もあるし、何より作り手とそれを飲むお客さんが、直接話せる良い機会だと思うんです。蔵人がどんな思い入れで日本酒を作ったのか、お客さんはどんな気持ちでそれを飲んでいるのか、直接分かり合える大事な会だと思うので、定期的に企画していきたいと思っています。

―では最後に、将来の夢、展望などありましたら聞かせてください。

いや、ずっとこのままです。お店を大きくする気もないし、人を増やすつもりもないんです。まじめにしっかりした商売をしていけば、家族が暮らせるくらい、人に迷惑かけないくらいにはやっていけるかと思って・・・欲が無さすぎですかね(笑)「なんだか来ると楽しいな」と感じてもらえて、また来たくなるようなお店になれば、充分なんです。
おそのえ商店から、おいしい日本酒をいっぱい広げていきたいですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


インタビューを終えて

小薗江さんは、初対面でも相手に緊張感を持たせない、和やかさを持っている方でした。
自ら切り開いた道を歩もうとする、その姿は凛としていてとても潔く見えます。未来への希望に輝く笑顔、時々見せる商人としての真面目な一面の中に、小薗江さんが日本酒に持つ愛情みたいなものが感じ取られました。
もちろん小薗江さんと同じ輝きは、自身が全国を駆け巡り揃えられた日本酒にも見ることができました。

正直、日本酒というと「おじさんのお酒」みたいなイメージがありましたが、お話を聞いているうちに、そのようなイメージもなくなり、改めて「日本」という国の文化の素晴らしさを実感しました。デパートやコンビニに行けば簡単に欲しい物が何でも揃ってしまう時代、大事な何かを忘れてしまっているのでは?と考えたことがありましたが、今回のインタビューで見つかったような気がします。
おそのえ商店には、古き日本の伝統と文化を後世に伝える「時代の中の拠点」という重要な役目もあるはずです。日本酒に限らず、おそのえ商店のような「元気な拠点」が、これからの日本を支えていくのではないでしょうか。
私事ですが、数日後お客としておそのえ商店に行き、8月の夏休みを利用して、とある蔵元を見学させてもらう予定です。(猿田)