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戻らない昨日を振り返るより
明日のことを考えればいいんです
2003/5/20 VOL.20
品質管理エキスパート 菊池嘉益さん


菊池 嘉益
Yoshimitsu Kikuchi

北海道札幌市出身。
昭和34年8月2日生まれ。O型。
趣味はモータースポーツ、影響を受けた人物は両親。ご自身の性格は「猪突猛進、有限実行」。

■学歴
英国ロンドン大学美術学部商業写真科卒業

■職歴
JICAの調査員としてアフリカとブルネイで、5年間水質調査や水井戸掘削、公共設備マスタープラニング等の事業に貢献。
帰国後、大手電機メーカーの品質保証部に13年間勤務。
1998年に退職後、コンサルタント会社を設立し、現在は品質管理のエキスパートとして日本企業、タイ工業省標準局(※1)の職員やモデル企業向けにTQM(※2)、TPM(※3)を教育、指導。
5月からはチェンマイ大学の客員教授としてタイの教授や生徒に品質管理についての講義を開始。

■お問合せ
専門書の翻訳等、お仕事のご依頼・お問合せはこちらまで
ykikuchi@giga.ocn.ne.jp

※1 タイ王国工業省標準局・・・日本でいうJIS規格を設定するところ、タイではTIS規格という。
※2 TQM・・・総合品質管理(Total Quality Management )。顧客の満足する品質を備えた品物やサービスを、適時に適切な価格で提供できるように、企業の全組織を効果的・効率的に運営し、企業目的の達成に貢献する体系的活動。
※3 TPM・・・生産管理(Total Productive Maintenance「全員参加の生産保全」の略称)





 


その国に合った最適な方法で仕事を進めます

―現在は、日本とタイを行き来する生活をされているそうですが、お仕事内容をご紹介ください。

タイでは、タイ王国工業省標準局(日本でいうJIS規格を設定するところ、タイではTIS規格という)で、職員に品質管理について指導したり、標準局で選んだ民間のモデル企業へも同じく指導をしています。また、今月から客員教授としてタイのチェンマイ大学で品質管理について講義を行うようになりました。このように1ヶ月の半分はタイで過ごし、残りは日本でコンサルタントの仕事やタイで使う資料の準備などをしています。
毎日忙しくできるからこの仕事は好きですよ。暇な時って、良いアイデアが出てこないですから。忙しくしてる方が自分に合ってるので、今がベストな状態ですね。

―それだけタイで過ごされると、一般の観光客として訪れる私達と違って、タイのローカルな面に触れる機会もあると思うのですが、菊池さんから見たタイの人の印象は?

タイの人は我々が思っている以上に謙虚さがあって、良い意味でのしたたかさもあります。我々日本人が忘れてしまった礼儀や作法なども残っていて、日本の若者がタイに行ったら、現地の人から学ぶところはたくさんあるのではないでしょうか。同じお米を食べる民族だし、基本的な考えは日本人と変わりませんよ。最近では、日本人よりもASEAN諸国の人の方が勤勉かもしれませんね。

―海外で仕事をされると大変なことも多そうですが、気をつけていることはありますか?

ASEAN諸国での仕事の会話は英語を使うんですが、お互い母国語ではないので、専門用語だと解釈にギャップがでてしまうことがあり、その辺の言葉の壁というのは難しくもありますね。でも、指導する立場の僕としても、得るものや教わることもたくさんあるし、楽しく仕事をさせてもらってます。一番気をつけているのは、こちらのやり方を押し付けないことです。押し付けがましくやっても相手が長続きしないし、国によって習慣や国民性も違いますから、その国のその場に合った最適な方法で、仕事を進めていくようにしています。

―組織の中で働くご経験もされてきたわけですが、独立の道を歩まれた今、どのように感じられますか?

組織の中で才能を活かせる、泳がせてくれる場があればよかったんですけどね。今のコンサルやJICAでの専門家というポジションは、自分のキャラクターや才能などをフルに活かすことができて、僕に合っているのだと思います。独立するということは、組織という頼れる看板もなく、自分の看板だけを背負ってやっていかなければなりません。今では仕事上でのパートナーが何人かいますが、まだ1人で仕事をしていた時は、大組織ではできない小回りを利かしながら自分の看板だけでやってきました。ここまで築き上げたことが、信念を持ってやれば自分でもできるんだ、という自信になりましたね。



 夢ではなく、短期の目標を持ち励みに 

―学生時代はイギリスに留学されていたとか。その頃のお話を聞かせてください。

もともと音楽を勉強したくて留学を決めたんですが、やはり音楽関係は多少のお金と自由な時間がないとできなくて、美術学部の商業写真科を専攻しました。やってみるとなかなか面白かったですよ。夏休みにはパリのソルボンヌへ夏期講習に行きました。当時は、通貨がポンド(イギリス)よりもフラン(フランス)の方が高かったので、イギリスで働くよりフランスで働いた方がずっと良いお給料をもらうことができたんです。
誰でもそうですけど学生の時ってお金がないじゃないですか。だから、飲食関係のお店でのアルバイトを選んで働きました。そうすればとりあえずは食べ物には困りませんからね。僕の場合、フランスに行くたびに太って帰ってきてましたよ(笑)。そういう意味でパリは仕事もあって学費も稼げるし、勉強もできて良いところでしたね。

―国際協力事業団(JICA)のお仕事をしたのはどのようなきっかけだったのでしょうか?

パリの日本食レストランでアルバイトをしていた頃、お客さんとして日本大使館の方が来たんです。その時、アフリカでこんな仕事がある、とJICAのことを聞いたんです。未開拓のところには昔から興味があったので、行ってみたいと思いました。
それから約5年間にわたって、アフリカとブルネイで水質管理や水井戸掘削、公共設備のマスタープラニングなどの仕事を、お手伝いさせてもらいました。

―それだけ多く海外での生活を体験されると、母国(日本)に対する見方も変わりそうですね。

ニュースでも何でも、外側から客観的に見るようになったし、愛国心が強くなりましたね。また、日本人として、知っておくべき日本の歴史はたくさんあって、私達はもっと日本の歴史を学ばなければならないと思いました。海外にいると日本についていろいろなことを聞かれますから、僕も日本の歴史や文化について勉強するようになりました。日本にいると日本でやってきたことや習慣が当たり前だと思いがちですが、海外から見ると必ずしもそうではないということがたくさんあって、けっこうカルチャーショックも多いですよ。

―菊池さんのように、良い友人や良い仕事に囲まれて充実した日々を送るためには、どのように心がけたら良いのでしょうか?

僕は夢じゃなく、短期、中期、長期的に目標を持つようにしています。現実的に2、5、10年という区切りで、2年以内には高級車を買いたいとか、5年後には結婚、10年後には家を買うとか畑を買うとか、夢じゃなく目標を掲げていくと、それが自分自身への励みになりますから。漠然と目標を持つのではなく、絶対やるんだ、ということを前提に目標を持つことが大切だと思います。

―仕事に限らず、将来的に考えていることは?

仕事でもプライベートでも、人生を通して多くの人に助けられながら生かさせてもらっているということを強く思います。60歳を過ぎたら、今まで学んできたことを生かして、ボランティアをしながら自給自足で生活できたらいいですね。お金は困らない程度にあれば十分だし、北海道で畑を作って暮らすとか、チェンマイあたりでのんびり暮らすのもいいかもしれませんね。

―仕事を探している人へメッセージをお願いします。

ポジティブに前向きな気持ちで物事に取り組めば、問題があったとしても解決するんじゃないでしょうか。細かいことは気にせずにあまり神経質にならないことが、前向きになれる秘訣です。そうすれば自然と周りの人の動きというのが見えてきますから。いつまでも戻らない昨日を振り返るより、明日のことを考えればいいんです。
それから、1人でくよくよ考えないで友達と会話してください。けっこう助けられますよ。

 

 

 

 

 



 




インタビューを終えて

菊池さんの海外での体験談はとても興味深く、日本と違った文化を持つ人たちはどんな考えを持って、どんなふうに生活をしているのか、大変楽しくお話を聞くことができました。今までに訪れた国はなんと140カ国。そう誰もが簡単に行ける数ではないと思います。それらの貴重な経験は大きな財産となり、その経験が菊池さんをより魅力ある人にしているようです。日本だけではなく世界を視野に入れて仕事をされる菊池さんには、「インターナショナル」という言葉がピッタリです。これからも品質管理という得意分野を生かして世界を支援していくことでしょう。
これから何かをしたい人、考えてる人。ぜひ菊池さんのように、世界を視野に入れて羽ばたいてみませんか。(さる子)