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自分がいけるかなって思うことよりちょっと上のことをすることじゃないかな。若干の背伸びですよ。背伸びし過ぎて足がつってしまうとしょうがないのでね。

2005/02/04 VOL.34-2
レーシングドライバー 加藤正将さん

加藤 正将
Masanobu Kato

茨城県ひたちなか市出身
(現在も在住)

■学歴
 常磐大学 国際学部 国際ビジネス科 卒

■職歴(戦歴)
 ●1994年、JAFジュニアカートB級ライセンス取得、アジア選手権等に参戦
 ●1998年、JAF/F4選手権参戦
 ●2000年、フォーミュラドリームシリーズにシリーズ参戦
 ●2002年、全日本GT選手権GT300クラス参戦
 ●2003年、F4シリーズ年間合計ポイント1位(シリーズ2位)
 ●2004年、全日本GT・スーパー耐久レース参戦、JAF/F4シリーズ選手権で年間シリーズチャンピオン
 ●2005/4/3、フォーミュラ・ニッポンにデビュー 第1戦にて13位

 他にツインリンクもてぎMOTE-LAジョイフルスクール専任講師など

■趣味
 ドライブ・カート・映画鑑賞

■公式ホームページ
 http://www.masanobu-kato.com/

■ (有)マーズレーシングファクトリー
〒312-0052
茨城県ひたちなか市東石川3-14-3

●事業内容
 レーシングカーのサービス・メンテナンス業務

 

 









どちらかというと諦めが悪いほうなので

―レーシングドライバーというのは、何を「作る」仕事? 何を「価値として」生み出す仕事だと思いますか?

 難しいですね〜。走りだしたら車のバランスを変えることは基本的にできないので、走っている最中に考えることは、与えれらたものでいかに最高の走りができるか。何秒でも早くゴールできるかだけを考えています。

―成績、ということですね。良い成績によって、レースが終わってファンの方に喜んでもらえて達成感を感じることができますよね。シーズンが終わりスポンサーの方への挨拶の時も成績次第で喜んでもらえる。すると、ある程度複合的ではあっても、場面によって作り出す価値が違ってくるということでしょうか?

 相手にもよりますけど、やはり看板を背負って広告として自分を応援してくれている方へは、最大限の媒体としての露出効果を出す努力はします。なのでレーシングスーツのデザインを考えたり、どんな形が一番写真移りがいいとか、発色だとか、そういうのも考えます。作るっていうのも相手によって違ってくるので、ファンの方に対しては精一杯やっている姿を見せることが一番心に残ると思うので、精一杯やっているところをファンの方に見てもらいたいと言ってますし、あとはホームページを持っているので、その場でいろいろな情報を発信すれば、それを見て喜んでくれる方もいるので、そういう努力はしています。

―たとえば成績が悪かったとか、車が止まっちゃったとか、そういった結果を出せないことで仕事自体が嫌になってしまったことは?

 それで辞めたいとは思わないですね。次がありますから、次にいくだけです。どちらかというと諦めが悪いほうなので。

同じことをしようとするとその人までいかない

―目標にしている人はいますか?

 いないですね。
 目標はF1のチャンピオンになることが一番の目標ですね。あと、ハコ車のレースの頂点がルマン24時間なので、ここでも総合優勝をしたいです。その2つが達成できればそれ以上はないですね。なかなか難しいとは思いますけど。
 逆に目標にしている人はいないですね。目標にしてしまうと、ドライバーってその人と同じようなことをやろうとするんです。多分、同じことをしようとするとその人までいかないんです。似通ったようなかんじにはいくんですけど、やはりちょっと落ちるような感じですね。佐藤琢磨がイギリスのF3に行ってチャンピオンになって、そこからF1に行ったという結果がありますけど、その後イギリスのF3に日本から何人も行きましたけど、やっぱりチャンピオンになれなかったんで、それで終了、残念というかんじなんですけど。
 ですから、同じようなことをすると失敗する、自分でオリジナリティーを付け加えて、いろんな成功した人の例を見て良いとこどりをしていくのが一番良いかと思いますね。得意不得意も若干ありますんで。

―これからの目標追及の過程で、やはり職業柄、セナとか、バイクだったら加藤大二郎みたいなことがついてくる場合も有り得ますよね・・・?

 それは常に考えてますね。知り合いで車椅子になった人もいるので、その辺は気をつけています。
 ここでどんなふうになったらクラッシュするな、とか、ここでタイヤとタイヤが触って自分だけ生き残って前の車が飛んでいって僕が優勝できるかもっていう瞬間も、去年も何回もあったんですけど、当てちゃったら多分最悪のシチュエーションを考えたら自分も飛ぶなっていうのがあって、ぎりぎりのところで抑える。
 その辺のかけ引きですよね。なので、クラッシュをしないでぎりぎりで攻め込めるかっていうのが一番。それに尽きると思うんですけど。


優勝する時ってわかる。頭に描ける。

―「かけ引き」というか「クラッシュギリギリ」って、同じ瞬間にで相手のレーサーも分かるわけですよね。「職場の仲間」というのか「同業者」というのか、他のレーサーで、意地悪な人っているんですか?

 いますいます。危ないのいますよ!天然で危ないのと、天然じゃなくて危ないのいますよ。
 天然で危ない人は周りが見えてなくて、単に慣れてなくて我が道を行くタイプ。危ないけどそれならいいんですよ。
 故意に危ない人います。できるだけ会わないようにしたりします。いやだけど、仕方ないですよね。多分相手もそう思っているだろうし。あんまりひどいとオフィシャルさんが見ているのでペナルティになりますが、ペナルティになるかならないかのところで邪魔されたり幅寄せをされたりしますから。
 なぜか知らないけど日本人はレースの世界ではフェアすぎる面もあるんです。特に僕らのカテゴリだと。この辺だとかなりフェア、だから僕も合わせなきゃいけない。GTとかだったらぶつけちゃうぞ、っていうところも周りがフェアだと、空気が読めないドライバーになるとまずいので、その流れに合わせるとか。その辺も難しいですけどね。
 なぜフェアかというと、多分タイヤが出てるか出てないかで、GTはぶつけてもタイヤ同士がほとんど当たらないんです。フォーミュラカーだと、前の車の後タイヤに自分の車の前タイヤがぶつかると回転と回転がぶつかって、その衝撃でドンと何十メートルも飛ぶんです。ドカンって。そういうのでたぶんフェアなんだろうなって思います。

―実際に「飛んだ」ことはあるんですか?

 雨の日に、百何十キロで普通にスピンしてドン!ってことはありますね。脳震盪とか意識が飛んだり、頚椎捻挫とかありますね。

―レースの前の晩、不安感とか眠れないとかありますか?

 最近はないですね。バタンっと寝ちゃいますね。でも、F4のチャンピオンがかかっていたりすると、落ち着けなかったりとか、自分でいろいろ作業をしなきゃいけないので、疲労感で眠れる利点はありますね。

―「勝つイメージ」などは、メンタル的な部分でどうコントロールしますか?

 予選の時点で決まりますね。優勝するときってわかる。頭に描ける、イメージできちゃうから、その通りにやると優勝する。予選が2位だったりだと不安になりますよね。
 ずっと3連勝してて、第4戦で勝てば決まるって状況だったんですが、その週に車が巻き込まれて壊れてしまって、車を直して2番手だったんですけど、技量的に勝てるんだけど、つくばサーキットのコースレイアウトはもてぎみたいに直線が長くないんですよ。つくばは短くて、横まで並ぶけどすぐコーナーがきちゃう、25週ずっと抜けない状態で、「ああ」って思って結局2位だったんですが、そのときは読めなかったですね。

―そういう時って、次は抜こうって前向きに考えているんですか?途中でダメかなと思ったりしますか?

 最後まで諦めないですね。ちょっとでも前がミスしたら自分は抜けるので真後ろにいて、自分はミスしないように走ります。
 それでいろんな抜き方を考えるんです。どんどんブロックをすればするほど、前の車はペースが落ちてくるんです。マージンを取って入ってくるんで。今度は内側から抜いていたのを逆に外側からというふうにフェイントかける。前の車はバックミラーで見てるので。どんどんフェイントをかけて、相手のミスを誘っていたんですが、大きなミスがなかったので抜けなかったですね。だいたいそこまでプレッシャーかけるとミスするんですけど、相手のドライバーもそこで負けたらチャンピオンの資格がなくなるんで、必死だったみたいですね。周りには、もう二度と一生あんなレースはしたくないと言ってたようです。

やれる範囲で最大限のパフォーマンス

―心がけ、大切にしていることは?

 できる限りのことをする。与えられた環境の中で、できるだけのパフォーマンスをすることは心がけていますね。
 決して裕福な状態で最初からレースを始められたわけではないので、人より車が劣っている時期もあって、GTも実際そうなんですが、F4はかなり良い車を用意してもらっているんですけど、GTは自分が言える範囲ではないので、性能が劣っている状態で自分がどこまでいけるか、やれる範囲で最大限のパフォーマンスをしようと心がけています。

―当面の目標は?

 2004年よりも上のカテゴリーで走りたい。フォーミュラニッポンに限らず上のカテゴリーっていっぱいあるんですよ。F3もありますし、選択肢はいろいろあって、海外っていうのもあるし、とにかく現状よりは上にいきたいなっていうのがあります。

―最後に、いろんな場面で就職・転職を考えている方たちにメッセージを。

 後悔のない人生を送ってもらいたいのが一番言いたいことですね。失敗をしてもいいと思うので。
 特に20代前半の方はいろいろやってみたほうがいいんじゃないかなと思います。失敗をして分かるとか、失敗をして納得がいくんだったら何でも挑戦してみればいいんじゃないかな、と。
 やってみたい仕事が自分ではちょっと無理かなって思うことでも、多分成功の秘訣って、自分がいけるかなって思うことよりちょっと上のことをすることじゃないかな、と思うんです。そうすると自分がすごく伸びられると思います。若干の背伸びですよ。背伸びし過ぎて足がつってしまうとしょうがないので、若干の背伸びをしたほうが後々後悔のない人生を送れるんじゃないかなと思います。

―その「若干の背伸び」の判断が難しいですよね?

 イメージ的には足がつらない程度です。でも20代だったらコケてもいくらでもあるんじゃないのかと思うんですけど、30代でもそれは言えると思うけど、特に20代の方ですね。希望をもってやってもらいたいですね。

―貴重なお話を、ありがとうございました。