| JJ |
御社は歴史の長い企業と伺っております。設立の背景等について教えてください。 |
| 田山 |
当社は1724年(享保9年)徳川御三家である水戸家の御用商人として呉服屋からスタートしました。創業276年目
になります。それから、戦後の1949年 (昭和24年)百貨店事業を興し 、株式会社 伊勢甚として再スタートしました。現在の社名株式会社伊勢甚本社はスーパーのチェー
ン展開をはじめた昭和37年からです。現在は、ホテル・ブライダル事業を中心に事業展開を図り、法人設立としては51年目です。
|
| |
|
| JJ |
300年近い歴史があるんですね。驚きました。続いて、事業の概略を教えて下さい。 |
| 田山 |
当社には、不動産、ブライダル、ホテル、旅行、スーパー銭湯、の
5事業部があります。 |
| |
|
|
|
| JJ |
御社は一般的には伊勢甚百貨店というイメージが強いのですが、百貨店事業のほうは
ずいぶん前に ジャスコさんと合併されましたよね。 |
| 田山 |
以前、ジンマートという業態が、関東各地にありましたが覚えてらっしゃいますか?いま
はジャスコさん経営のウェルマートとなっています。ここも土地は弊社からの賃貸です。 このような形態で、合計約40の商業施設の所有・管理をしております。また今年からビルの
管理事業で新事業を始めました。テナントさんはすべて開業医さんを対象に賃貸するとい う事業で、中央診療グループという名前です。 |
| |
|
| JJ |
開業医さんへの賃貸ですか? |
| 田山 |
今は内科、麻酔科(痛み外来)、眼科、薬局と4テナント入っていますが、近々歯科も入ります。
ビル内にはリハビリステーションもあり、施設的には整っていると思います。将来的に このビルの全テナントに各医院が入ればかなりの需要が見込まれると思います。なんとい
っても場所がいいので交通が便利です。目の前のバス停には一日約3千本のバスが止まります。 |
| |
|
| JJ |
新しい総合病院というわけですね。新しい事業を着実に成功されていますが、ホテル
ビジネスでは、プラザホテルの建てなおしが注目されています。 |
| 田山 |
はい、いまのプラザは3月で閉めます。そして来年11月に茨城県庁の近くに新ホ
テルが誕生するのです。この約半年のブランクを私どもは重要な充電期間と捕らえております。 |
| |
|
|
|
| JJ |
というのは具体的にはどのような意味ですか。 |
| 田山 |
今までプラザに居た従業員の希望を募り、他の事業部への異動か、他ホテルへの研
修のどちらかを選択してもらいます。どちらを選んでも社員にとって良い刺激となるでしょう。 改めて自分の仕事に対する思いを見つめなおしたり、他の良い部分を吸収したり。このような
期間が持てることは、当社にとっても社員にとっても非常に幸運なことと考えています。 |
| |
|
| JJ |
田山さんは人事も担当されているそうですね。このような多角経営をされていれば、各部門
で様々な人材ニースがあり、採用は事業の将来を決定するくらいの大変なお仕事と思います。 良い人材は集まってきていますか? |
| 田山 |
そうですね。県内では少々不足傾向です。それに比して、都内からの応募者は有望株が
多いです。多様な人的環境で切磋琢磨されてますので、まず、ハングリー精神が強い。また、 挨拶の仕方一つをとっても、緊張感があります。
|
| |
|
| JJ |
どんな職種が人気ですか? |
| 田山 |
希望職種が最近変わってきています。4、5年前は圧倒的にホテル事業、しかもフロント業務が
人気でしたが、ここ最近はブライダルアドバイザーや接客スタッフが人気です。ブライダルアド バイザーの応募者の9割は女性です。女性にとって憧れの結婚式をアドバイスするというのが、
やってみたい気持ちをおこさせるのでしょうか。最近は専門職として認知されてきましたし。 |
| |
|
| JJ |
女性の管理者を積極的に登用されていますか? |
| 田山 |
現在の当社の男女比率は4:6ですが、若い世代だけで考えると約8割が女性に
なります。ホテル・ブライダル業界が女性に人気があると言うことが一目でお分かり 頂けると思います。
現在女性の職場進出が著しい伸びを示していますが、当然ホテル ・ブライダル業界も次の世代は、女性の力がますます重要になってくるものと思われます。そんな中、当社においても女性の管理職登用は積極的に行っていますし、これからも行う予定です。とは言え、実は応募者の約9割が女性と言うこともあり、一方
で将来の男性幹部の確保の方も重要課題になっております。 |
| |
|
|
|
| JJ |
最近の男性は仕事に対して意欲的でないと聞いています。 |
| 田山 |
フリーター的な考えの人が増えましたね。部署はあまり異動したくない、配属部署のえり
好みをする、何をやりたいのかわからない、とモラトリアムの延長を社会が許容しているのでし ょうけど、仕事に対する覚悟とか自分に対する厳しさが失われつつあります。
|
| |
|
| JJ |
仕事や就職はあまり重要なテーマでは無くなってきたのでしょうか? |
| 田山 |
楽なほう、楽なほうに逃げようとしている。あくまで自分の好みを押しとおし、組織の一員であ
る自覚が足りません。仕事は人生の重要なテーマには変わらないと思いますが、それから逃避し ている。そのほうが楽だからです。もちろん、なかには有望な人材もいます。
|
| |
|
| JJ |
そういう厳しい人材市場のなかで御社の人事は今後どのような方向性を目指していかれますか?
|
| 田山 |
いかに良い素質を見極め育てていけるか、につきると思います。本人さえ気付かない潜在的
な才能や、資質を見つけ、磨き上げていく、そういう環境を提供する。開花するチャンスを仕事と して与える。そういうことの積み重ねが企業を良くすると信じます。 |
| |
|
| |
□インタビューを終えて |
| |
インタビューでは詳しく聞けませんでしたが、スーパー銭湯も伊勢甚本社の主力事業です。皆さん
ご存知でしたか?呉服⇒百貨店⇒スーパー⇒不動産管理開発⇒ブライダルと時代 の先端事業をを走
りぬいてきた伊勢甚本社は、新たにお風呂に入る楽しみを提供する仕事を、事業のひとつの核に据 えました。去年の12月に河和田にオープンしたスーパー銭湯は、なんとこの1年間で40万人の
集客があったそうです。この市場の読みは半端ではありません。 市場の変化をいち早く読み取り、自らを惜しげも無く変革する、その冷静な経営判断とスピードが
この会社の強さです。300年近い歴史のある老舗企業が、何故ここまで身軽に事業展開、転換ができ るのか、それが謎でした。そして、今回田山さんのお話をお聞きして、ひとつの解答が得られたと
思います。それは、人材に対する経営の卓越した考え方と姿勢です。 例えば、ホテルの移転による余剰人員を、他事業への補填と社員の自己啓発の機会としてとらえられ
る発想の転換は、社員の能力を会社の大切な資産と考えている証です。都内から積極的に人材を採用 するのは、異分子を社内にとりこむことによって硬直化しがちな組織に化学変化をおこそうという考
えの現れ、そしてなにより最後の言葉、「素質を見極め育てる」に象徴される人間の本質の直視と教 育の重視、これらがこの会社の強さを支えています。そして、このような学習環境で育った人材が、
新たな事業機会の発見と適格な情報提供、そして事業を成功させるエネルギーとパワーをこの会社に 提供していってるのではないでしょうか。
|
| |