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■『釣り好きが高じてルアーショップの経営に――椎名和広さん』
∽∽∽趣味を仕事にする。肩から力を抜いて仕事をする。よく聞く言葉だけれど、実際、本当に全うしている人にはなかなか、お目にかかれない。それを実践しているのが、高円寺でルアーショップを経営している椎名さんだ。椎名さんが現
在の職業に就くまでには、こんないきさつがあった。
1965年東京生まれ。東京の高校を卒業後、大手アパレル企業へ就職。営業職に就いた。 「割と自由な社風だし、大人数で忘年会、なんて会社員の風情を味わえたのは面白かった」。
営業という仕事は、自分を売る仕事だと言う。どれだけ、相手の心に入り込めるか、それで成果が出る。難しい相手に入り込めたときには達成感があった。人をつかむのだ第一の仕事だと感じた。「正直が一番。嘘をついていると、自分も気持ち悪いし、失敗したら、二度とその人に会うことができなくなる」と、その職場で、自然体でいることが最も大切で、仕事に繋がることだと痛感した。
午前12時や1時まで仕事をすることはザラだった。でも、遊びも忘れていなかった。ハーレーダビッドソンの売買をしている男友達など、何人もとつるんでは、夜な夜な、青山や六本木、渋谷などあらゆるクラブに顔を出していた。営業職が昼間の顔なら、クラブ通いは夜の顔として定着していた。
アパレル企業は七年勤めて辞めた。当時、DCブランドが続々と倒産していたり、給料の面で不満があったためだが、本当の理由は、「当時、片思いしていた女の子が、その会社を辞めたから」。次の就職も決まっていないのに、こうした理由であっさり何年間も勤めた仕事を投げる人は、そうそういない。その会社の自社株と退職金を手に、辞職した彼はその後、二年間、定職に就かなかった。たまに、バイトとして、友人の紹介などでレコードジャケットの看板を作ったりしていた。
∽∽∽夜の遊び仲間2人から、誘いが来たのは、そういう時期だった。共同経営で恵比寿と広尾の中間辺りに『カラーズ』というクラブを出さないかという話だった。「一人250万円くらい。車を一台、買うつもりになれば買えると思って、親の家を担保にして参加することにした」。遊び仲間と一緒に経営し、毎晩、遊べればいいなぁという程度の気持ちだった。三人ともクラブ通いは好きだったが、経営にはずぶの素人。「でも、これから何が始まるのか分からない楽しみに、わくわくした」。
お店のコンセプトは3人で決めた。仕事も分担した。彼の主な仕事は、カウンターのなかでお酒を作ることだった。「フラフラとやっていた感じだなぁ」。土日以外にはあまり人が入らなくても、悪い時期には給料がまるで無いことがあっても、色々な人と出会えることが楽しかった。だが、やがて、1人が意見の食い違いから店を辞め、次いで、彼も6年ほど続けたクラブを私的な理由で辞めざるを得なくなってしまった。
∽∽∽また何もしない日々が二年ほど続いた。その頃、友達の影響で釣りを覚えた。週に六日は釣りに行った。子供の頃から釣りはやっていたが、ルアーの魅力を知ったのがこのときだった。「あくまでも釣るための道具のルアーだけど、デザインもそれぞれ個性があって、そのデザインの素晴らしさが気に入ったんだと思う」。釣りはイメージなのだという。水の中や魚の様子を想像し、考えているときが一番、楽しい。魚は命がけだから、自分もそれくらいの気持ちで釣る。釣るための道具として、ルアーはデザイン的にも気に入っている。
これまでもTシャツやジーンズ、映画のチラシなど、色々なもののコレクターだったという椎名さん。ルアーも同じような感覚でコレクターになっていった。そして、現在のお店を出そうと、友人に誘われ、2人で共同経営へ。「何もしていないよりやった方がいいかなぁという程度で始めたんだけど」というが、お店は開店二年目。百円から二十万円程度の、千個以上のルアーが常に揃い、中学生から五十、六十歳くらいの幅広い客層が集まっている。新品は注文で作るものだけ。七十年代や八十年代のものが主流だ。委託買い取りもしている。
様々な年代の釣り好きが集まっては、椎名さんを中心に釣り談義に花を咲かしている。
「コレクターというか、もう病気かもしれない。みんなが持っているものを持つのではなく、ウッドでできた古いものを今、個人的に収集しているんだけど。デザインやアートとして考えてしまうんだよね。自分の手に来るまでに何人もの手を経てきている。それを考えるだけでいいんだよね」。
∽∽∽今も時間さえあれば、日本全国、釣りに出かける。たまにクラブへ行ったりもするが、夜遊びよりは釣りの方が好きになった。「道楽と仕事が一緒にできて幸せ。好きなことを仕事にすると楽しくならないときもあるけれど、今のところ、楽しく仕事できている」という椎名さん。仕事は欲を満たすために必要なもの。稼げないと生活ができない。金銭的に多少の余裕がないと、他の余裕も出てこないと実感している。
この先の展望は、店を良くしていくこと。そして、まだまだルアーのことを知っていきたいという。常に自分に正直に、肩肘張らずに仕事をしていく。それが椎名さん流の仕事術だ。
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ルアーショップジャンクフード Tel:03-3310-5891
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