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Life Style コラム<<No.8>>

■『渋谷のレストランオーナーと母親業を同じ感覚でこなす――溝畑まさよさん』

∽∽∽彼女は一昨年の秋、渋谷にオープンした、バリ風エスニックレストラン・バーのオーナーだ。もともと、彼女の母親が昭和30年代から飲食店を営み、その世代交代として、姉夫婦とファミリー経営を始めた。内装は彼女もその姉もバリ島に惚れ込んでいるため、すべて現地調達した本格派。厨房ではベトナム人のコックが腕を振るっている。渋谷駅から徒歩一分という立地条件にも恵まれている。

飲食店を自分で出したいと思っている人は、数知れない。そういう人たちから見ると、若干35歳にして、飲食店での修行などまるで知らずに店を持っている彼女は、羨望の的に違いない。だが、彼女は言う。「昔から、自分で自分が何をしたいのか、分からなかった。今のこのお店も、話が出たときにはためらった。飲食店の経営をしたいと思ってはいなかった。けれど、やるからには、母親が築いてきたものを壊さないよう、しっかりやらなくてはならないし、その自信がなかった。」

∽∽∽彼女は日大の附属高校から、日大芸術学部へと進学した。特にやりたいことがあったという訳でもない。高校の教師から、「日芸は無理」と言われ、反対されると突っ走る性格から、頑張って日芸に入学した。「遠くのビジョンは持っていないのに、目先の負けず嫌いで動いてしまう」のが彼女自身の分析だ。
だが、日芸に通ってみると、附属から通う人たちは少なく、地方出身の人たちがキャンパス内で、なにやら奇抜なことをやっては悦に入っている状態だった。「大学での自分の居場所はなかった。奇抜なパフォーマンスをして人目を引こうとすること、変人を演じているようなところが嫌だった。」

そして、彼女は、慶応大学の同じ年の男の子と知り合い、恋に落ちた。それまで恋愛を経験したことのなかった彼女は、彼とのつきあいにどんどんのめり込んでいった。彼を通して、東京出身の慶応、早稲田の友人も大勢できた。彼が彼女の世界を、とても広いものにした。「その仲間達といるときが楽しかった。やっと、居場所が見つかったと思えた。」

∽∽∽やがて就職の時期が来て、漠然とマスコミ志望だった彼女だが、あまり就職活動に熱心ではなかったため、希望の会社は無理だった。洋服好きで、某大手アパレル企業にコネもあって入社。
「子供の頃から渋谷の近くに住んでいたせいか、いつも、洋服は渋谷の西武デパートなどで、自分で選んで買っていた。小学校3年生のときには、友達が身につけていたものがどうしても欲しくて、銀座まで一人で買い物に行ったこともある」というほど、子供の頃からファッションには興味があった。

会社には、自分で気に入った服を身につけていった。だが、アパレルとはいえ、あまりにファッションに凝ってしまうと、逆に、仕事ができないのでは、という先入観も持たれたという。「すぐ辞めちゃいそうだよね」と面と向かって言われたこともあった。だが、9年間、仕事をこなした。
「私生活では学生の頃からの彼と破局したり、いろいろと精神的にまいった時期もあったけれど、それでも、社会人なんだから、どんなことがあっても仕事をしなくちゃならない。それを会社生活で覚えた。」

∽∽∽現在の伴侶と知り合い、同棲。そして、結婚の日取りを決めているうちに、妊娠。できちゃった結婚ではないのに、結果的に、身ごもったままバリ島で式をあげた。そして、退社。
「お店を開店させるとき、私は自信がなかった。子供の面倒をみながら、夜の仕事までできないと思った。でも、一度、やると思ったらやらなくてはならない。その分、子供には申し訳ないと思っている。」

遠いビジョンを昔から持ったことがないという彼女だが、今、確かに言えることは、自分のような子供時代を自分の子供には過ごさせたくないということだ。彼女は子供の頃、母親が店を経営していたために、ほとんど、母親と一緒にいなかった。だから、友達の普通のお母さんに憧れて育った。
「眠るときも一緒。起きたときも、一緒にいてくれる普通のお母さんになるのが、今の望み。お店を始めてから、時間に拘束されて、子供をせかしたりすることもある。それを客観的に自分で感じて、とても、子供に申し訳ないと思っている。今、一番幸せなのは、休日に公園へ行って、子供がのびのびと遊んでいる姿を眺めているとき。子育てはきっちりとしていきたい。」


∽∽∽店の方も、彼女の温厚な人柄も手伝い、いつも彼女の友人関係や、一元さんから常連になっていく人たちが席を埋めている。ファミリー経営ならではの、ゆったりとした空間と、彼女のセンスが生きたお店は、集う人々にとって、渋谷の雑踏から隔離してくれる、リゾート的な存在だ。「昔から大勢の友達と飲んだり、集まったりするのが大好きだった。だから、このお店も、色々な人が集まる、和めるお店にしたい。」と、仕事の面でも意欲的だ。

常に穏やかで、人に優しい彼女の心遣いが満ちた店内には、他のお店にない、魅力的な何かがある。母親としても、経営者としても、肩肘をはらず、同じ感覚でやりこなしている、それが彼女の今の姿だ。

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アジアンレストラン batu(バトゥ)
渋谷区道玄坂1−6−7須佐ビル3F
TEL:03−3461−7874
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